狭山市で昨年1月に虐待されていた女児=当時(3)=が死亡した事件など県内で発生した虐待事件について、「警察や児童相談所など関係機関が情報を共有し適切な対処をすれば防げたのではないか」として、NPO法人「シンクキッズ」(東京都港区、後藤啓二代表)が19日、県に虐待の情報共有を求める要望書を提出した。(川上響)
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同法人は「虐待死ゼロ」を目指し、平成26年8月から日本ユニセフ協会などを共同呼びかけ人として、関係法令の改正を求めている。現在までに約3万5千人の署名を集め、東京都、大阪府、大阪市など7つの自治体に対して要望書を提出してきた。
後藤代表は、自民党県議団が検討している県虐待防止条例に「児童相談所長は、児童虐待の疑いのある旨の通告を受けた場合には、児童の所在地を管轄する警察署長に通報するものとする」など情報共有や虐待防止に関する内容を盛り込むことを求めており、今回の要望書で上田清司知事と木村健司県公安委員長にも理解を求めた。
県内では23〜27年度に児童虐待死亡事例が13件あり、28年には狭山市、29年には鶴ケ島市で虐待事件が発生している。要望書では、狭山市の事件について、女児が死亡する前年の6、7月に110番通報があったことを警察から他機関へ通告せず、一方で警察も乳幼児検診が未受診だったことを知らないなど情報共有が不十分だったと指摘している。
県は29〜33年度の5カ年計画で児童虐待死亡事例を0件にする目標を掲げているが、後藤代表は「理念だけではなく、具体的な方策が必要だ」と警鐘を鳴らし、「関係機関が全て情報を共有できる条例を作り、モデルケースとして全国へ広めたい」と思いを込めた。