浪速風

南国で咲いた北国の春

数年前に妻が鹿児島の知人に贈ったスズランが「今年も咲きました」と写真が送られてきた。北海道みやげだったが、わが家ではすぐに枯れてしまった。スズランは本州中部以北の高地に自生する。高温多湿に弱いというのに、南国で咲かせるのは、よほど育て方が上手なのだろう。

▶「君影草」の別称がある。由来は、大きな葉に隠れてひっそりと花を咲かせる姿が、男性の影に寄り添う古き日本女性のイメージと重なる。あるいは、頭を下げて愛しい人を待ち続ける姿を連想させるからともいう。男尊女卑だとクレームがつきそうだが、毒性があり、見た目は清楚でも…。

▶フランスでは「スズランの日」の5月1日に、家族や愛する人にスズランを贈る習慣があり、街頭にスズラン売りの屋台が出る。花言葉は「幸福の訪れ」。小さな白い花は鈴のようで、「すずらんのりりりりりりと風に在り」(日野草城)。この時期、北国は春と初夏とが重なり合っている。