「幅広い合意形成を重視する」「慎重に進める」と繰り返してきた保岡は12日に面会した安倍に、民進党などの野党議員らと会食を重ねるなど、改憲のムード作りに努めていると訴えた。だが、安倍はそれでは事態は前に進まないと判断した。司令塔不在の民進党相手では、下からの合意形成は覆され、無駄になると考えている。
安倍は、民進党も含む幅広い合意に基づく憲法改正から、自民、公明、日本維新の会の3党を中心とする改憲へとかじを切った。
「政治は現実だ。いくら立派なことを言っても実現できなければ意味がない。私の改正案が自民党案と違うと批判する人は、公明党を説得してから言えばいい」
こう周囲に強調する安倍の力業で、自民党に染みついた改憲への消極姿勢は変わるのか。長年放置されてきた重い宿題の解決は、ようやく入り口にさしかかった。(敬称略)