ただし、日本が核武装を拒否する道を選ぶのならば、核兵器以外の手段による「相互確証破壊」を追求すべきである。現代科学は核兵器によらない「相互確証破壊」を可能にしつつある。高精度長射程ミサイルや人工知能を搭載した無人兵器などが開発されている。米国も原子力潜水艦に搭載したミサイルの弾頭の一部を核兵器から通常兵器に変えた。
また、核兵器は道徳的に悪であると考える国は、核兵器による報復を躊躇(ちゅうちょ)するかもしれない。報復がないと攻撃側が考えれば先制攻撃を抑止できない。他方、通常兵器による報復は罪悪感がなく確実に実行されるだろう。
抑止のポイントは二つある。一つは人間を動かす最大の動機は恐怖であること、二つ目はコストをかけるほど抑止の信頼性が高くなることである。(東京国際大学教授・村井友秀 むらいともひで)