冷戦時代、フランスの対ソ抑止戦略はソ連の国力の15%を破壊することであった。15%の国力の破壊はソ連が耐えられる限度を超えるとフランスは考えた。フランスの計算によれば、フランスとソ連の核戦力の差から、戦争になればソ連の国力の15%、フランスの国力の95%が破壊され、共に致命傷を負うことになる。15%を破壊されても95%を破壊されても耐え難い損害を受けたという心理的ダメージは同じである。フランスの抑止戦略は、ソ連がフランスを攻撃すればソ連は少なくとも片腕を失うことを保証することであった。フランスは核ミサイルを搭載した6隻の原子力潜水艦で、このメカニズムを保証しようとした。
冷戦時代の米ソの抑止戦略も同じであり、戦争になれば共に滅びる「相互確証破壊」戦略であった。この恐怖の構造が冷戦時代の「長い平和」を支えたのである。
≪現代科学が新たな抑止を可能に≫
核兵器保有国が核兵器を放棄することを期待するのは非現実的である。核兵器による攻撃を抑止するためには、核兵器を放棄するようにお願いするよりも、歴史的に証明された「相互確証破壊」による抑止システムが効果的である。