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【ロンドン=岡部伸】国連の人権条約に基づく拷問禁止委員会は12日、慰安婦問題をめぐる2015年の日韓合意について、被害者への補償などが不十分として、合意の見直しを勧告する報告書を発表した。在ジュネーブ日本政府代表部も確認した。
勧告に法的拘束力はないが、韓国メディアは、事実上の合意再交渉を求めたと報じており、日韓合意の「再交渉」を公約に掲げる韓国の文在寅大統領が勧告を基に日本政府に再交渉を要求する可能性がある。
報告書は韓国に対する審査を記したもので、同合意について「元慰安婦は現在も生存者がおり、被害者への補償や名誉回復、再発防止策が十分とはいえない」と指摘。日韓両国政府に対して、「被害者の補償と名誉回復が行われるように尽力すべきだ」と強調した。
韓国の聯合ニュースは国連勤務経験のある専門家の話として、同委員会が「『人権原理主義者』と称してもかまわないほど、世界的に最もリベラルな機構」と評されていると紹介。「勧告に強制力がない点を考慮しても、一定の信頼性と権威を持っている」とする分析を伝えた。
同委員会は拷問等禁止条約の批准国家が履行義務を果たしているかを監視するため1987年に国連に設置された。日本は1999年に条約を批准した。国連では昨年3月にも、女子差別撤廃委員会が「日韓合意によって問題が解決したとみることはできない」と勧告している。
合意は、日韓両国が2015年12月28日、旧日本軍による慰安婦問題に関し「最終的かつ不可逆的な解決」を確認し、日本が軍の関与と政府責任を認め、元慰安婦を支援する韓国の財団に10億円を拠出した。
安倍晋三首相は11日の文氏と電話会談した際に合意履行を求めたが、文氏は「国民の大多数が情緒的に受け入れられないのが現実だ」とした。