子供のドア指挟み事故多発、都が警鐘 防止グッズ活用、注意徹底を

 どの家庭にもあるドアや扉に子供が指を挟む事故が相次いでいることが、都が保護者を対象に初めてまとめた実態調査で分かった。調査では、回答者の約3分の1の子供が指を挟んでいたことが判明。都内ではドアの指挟み事故で、子供が指をけがしたり、切断したりするケースも多数発生している。都は「安全グッズの効果的使用や子供の見守りを」と呼びかけている。(畑尾行範)

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 ある休日の昼下がり、記者の自宅で、幼稚園児の息子が遊んでいた。突然、「痛い」と叫びながら母親のもとへ飛び込む息子の手元をみると、指先からは鮮血が。リビングの引き戸を勢いよく閉めた際に指を挟んだのだ。傷口を縫うなどの大事には至らなかったが、親としては安心なはずのわが家での事故に心が痛んだ。

 ◆3分の1が経験

 同様の事故が多いことは都の調査からも浮かび上がる。調査は主に都在住で小学校1、2年生の子供と同居する保護者1030人を対象に昨年9月にインターネットによるアンケートで実施。子供がドアに挟まれた経験があるのは、336人と約3分の1を占め、挟まれそうになったヒヤリ事案も457人だった。

 「子供が靴を履きながら丁番に手をかけているのに気づかず、閉めてしまい指を挟んだ」。「4歳の子供が、リビングの引き戸を自分で開けようとしたとき、ドアと一緒に戸袋に手が引き込まれた」。都の調査には、このような声が寄せられた。

 東京消防庁の集計でも、子供がドアに指を挟む事故が続出していることが分かる。平成23〜27年の5年間で、手動ドアに挟まれた0〜12歳の子供の救急搬送は932人、うち45人が指を切断した。子供が建物のドアやエレベーター、鉄道車両の戸袋などに挟まれるなどした事故では手動ドアによるものが最も多い。

 都の担当者は、手動ドアの開閉速度を緩やかにする「ドアクローザー」や、開き戸の丁番側のすき間への指挟みを防止するグッズの取付を呼びかける。また、「子供がドアの近くで遊ばないよう保護者は留意してほしい」としているが、周囲の見守りには限界があるため、都は業界の対策に期待する。

 ただ、業界に根本的な対策を求めることはドアの構造上、難しいようだ。「ユーザーへの安全面の認知向上が課題」と話すのは、「日本サッシ協会」の担当者。これまでも業界として注意喚起とともに、ドアクローザーの取付やすき間を小さくする取り組みを行ってきたという。

 ◆リスクゼロには…

 しかし、「開閉する」というドアの物理的な構造からして、防止グッズなどで補助してもリスクをゼロにすることは難しい。同協会では、防止グッズの効果的な使い方について、行政から要請があれば「前向きに連携して、消費者に伝えたい」としている。

 都の担当者は、梅雨や夏を控え、空気の入れ替えやベランダへの出入りなどでドアや扉を開閉する機会も増えるなか「保護者への対策や見守りの呼びかけと商品側の取り組みの両輪で、事故を少しでも減らすよう訴える」と話している。

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