日本の医療機関で受診した保険に未加入の訪日外国人が治療費を踏み倒すケースが後を絶たない。訪日外国人数が昨年初めて2千万人を突破し、国は東京五輪までに4千万人を目指している。ただ、それに比例して急病などで受診する患者数も増えており、未収金の発生を防ぐためのノウハウがない医療機関も多く、喫緊の課題となっている。(桑村朋)
食い逃げは逮捕だが
西日本の玄関口、関西国際空港近くの「りんくう総合医療センター」(大阪府泉佐野市)には、外国人向けの国際外来がある。緊急着陸で運ばれた人、関空で出国をとめられた人…。搬送理由はさまざまだが、大半が急患で、「持ち合わせがないので後で払う」などといい、医療費を最後まで支払わずに帰国する訪日外国人患者が散見されるという。
「『食い逃げ』は逮捕されるのに、医療費の未納は許されるのか」
国際診療科の南谷かおり医師はやりきれない思いをこう表現する。
5年前、多額の医療費を滞納した中国人男性の家族を提訴して以来、独自のマニュアルを作成。医療通訳を配置し、訪日患者に医療費を明示して治療法を細かく説明し、カード払いを原則にするなど、対策は取ってきた。だが、トラブルはなくならないという。