県都の課題・さいたま市長選を前に

区間格差 郊外に「負のスパイラル」 

 「いつの間にか完成したね」と、通りすがりの人が指さす先に、真新しい多目的複合施設「OM TERRACE(オー・エム・テラス)」があった。先月下旬、JR大宮駅東口前。東京五輪など世界的イベントなどで市を訪れる観光客らをもてなすために設けられた、新しい県都の顔だ。

 にぎわいを増す大宮区。しかし、市議の一人はこんな市民の声を紹介する。

 「浦和・大宮など中心部はどんどん変わっていくが、離れた区では、全く恩恵が感じられない」

 ◆コンパクトの陰に

 さいたま市内の区間格差。その背景には、市がまちづくりの方針として掲げる「コンパクトシティ」構想がある。

 構想では、郊外地域を中心とした無秩序な乱開発を抑制しつつ都心部を有効に活用し、市街化のスケールを小さく保つ。具体的には、大宮駅周辺・さいたま新都心周辺と浦和駅周辺を、高度な都市機能を集積し都市活動や市民活動の拠点となる「都心」に、武蔵浦和、美園、日進・宮原、岩槻駅周辺を、地域の特性を生かした空間・施設整備で都心を補完する「副都心」に位置づける「2都心4副都心」の都市構造計画をベースとしている。

 「大宮、浦和、川越なんかと比べると、開発の速度が遅いな、と感じてしまうことはある。最近は空き家も増えてきている」

 そう不満を漏らすのは、岩槻区内の自治会長を務める男性(76)だ。

 ◆住みやすさに差

 区間格差は、市が昨年末に発表した平成28年度の「さいたま市民意識調査」にも表れた。さいたま市が「住みやすい」「どちらかといえば住みやすい」と答えた在住者は前年度比0・3ポイント増の83・2%に達したが、区ごとでは中央区が92・5%、浦和区が91・5%に対し、岩槻区は69・0%と大きく差がついた。桜区は71・9%、西区は73・9%だった。

 3区の居住地域のイメージでは、「利便性」の項目で全体と比較してポイントが低くなる傾向が見られた。市関係者は区間格差の要因に、(1)交通網の偏在(2)公共施設マネジメントによる新規施設整備制限(3)市街化調整区域の多さ-を挙げ、「都内や市中心部へのアクセスが悪いので人が集まらない。では地元を盛り上げようとするが、公共施設も民間の開発もしづらいという、負のスパイラルになっている」と話す。

 ◆「今こそ模索を」

 数年前から岩槻区で暮らす30代の男性は、家賃の手頃さや大宮区内の職場への行きやすさで転居を決めた。「子供が小さいので、人が比較的少なく静かで、緑も多い今の環境はいい」と岩槻の良さを語る一方で、「都内で働く人は移動が不便と感じるだろうし、子供が大きくなれば、細い道路や暗い夜道が不安材料に変わるかもしれない」とマイナス面も指摘する。

 ベテラン市議は「市に活力がある今こそ、各区が自立して栄える方法を模索すべきだ」と話し、こう続けた。

 「10区全てが自立して輝いてこそ、さいたま市が合併した意味が生まれる」 (菅野真沙美)

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