音楽教室に通う市民合唱団などが、組織的犯罪集団であるはずがないが、法務省の幹部は「楽譜のコピーを違法と知らずコピーしていた場合も音楽教室が組織的犯罪集団といえるのか。われわれは(対象に)入らないと考えるが、その理屈は何かという議論だった」と振り返る。
その意味では、枝野氏の質問は「刑法の難しい論点」(法務省幹部)だ。
もっとも、だからといって普通の団体が犯罪集団に一変したらその限りではない。安倍晋三首相も2月17日の衆院予算委員会で「犯罪集団に一変した段階で(構成員が)一般人のわけがない」と答弁している。
テロ等準備罪に反対する市民団体が4月6日、東京の日比谷公園で開いた集会では、会場前で多くのビラが配られた。極左暴力集団(過激派)革マル派のものもあり、「〈今日版治安維持法〉の制定を許すな!」という文字が躍っていた。
「共謀罪NO!」のプラカードを掲げた参加者を前に、野党議員らは「とんでもない監視社会になる」などと声を張り上げていたが、適用対象は「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と明記されており、一般市民や一般企業が処罰されることはない。構成要件をみれば「内心の自由を脅かす」といった批判があたらないのは一目瞭然(りょうぜん)だ。
野党の主張はときに恣意(しい)的で、議論をすり替え、ことさら捜査への不安をあおっているようにも見える。北朝鮮がミサイル発射を強行する中、法整備は急務だ。キノコや柴刈りといった揚げ足取りではなく、冷静で中身のある議論を望みたい。