産経抄

日米激戦の地となった硫黄島で、戦没兵鎮魂のための土俵入りが行われた… 5月2日

 戦後50年に当たる平成7年6月、日米激戦の地となった硫黄島で、両国の戦没兵鎮魂のための土俵入りが行われた。曙、貴乃花の両横綱が土俵入りを披露すると、参列した遺族から大きな拍手が起こった。

 ▼「日米両国出身の横綱ができ、巡り合わせというか、戦没者の霊を鎮めたい一心だった」。日本相撲協会の出羽海理事長の熱意が実を結んだ。その4カ月後に開催された欧州巡業のパリ公演も、理事長がいなければどうなっていたことか。

 ▼フランスが核実験を強行した直後である。国内では中止を求める声が一斉に上がったが、「信義を守る」との決意は揺るがない。ただしエリゼ宮に招かれると、シラク大統領に対して核実験の中止を求めた。前夜は悩み抜いた。発言が問題になれば、職を辞す覚悟はできていた。

 ▼横綱佐田の山時代は、2場所連続優勝の直後の場所で、3敗すると引退を発表した。理事長時代は、急進的な改革を進めようとして頓挫する。正しいと信じた道を突き進む。そんな人柄を誰よりもわかりやすく伝えているのが、小紙連載の「舞の海の相撲俵論」である。

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