産経抄

95歳までの知的生活 4月19日

 渡部昇一さんのベストセラー『知的生活の方法』を読んだのは、大学生時代である。読書の技術から、カードの使い方やワインの飲み方まで、大いに「知的」な刺激を受けた。ただ、実践には至らなかったのが、40年たった今でも悔やまれる。

 ▼渡部さんによれば、「知的生活」の原点は、旧制中学での恩師との出会いだった。佐藤先生の英語の授業がなかったら、英語学を一生の仕事にすることはなかったという。先生の自宅を訪ねると、英語の本はもちろん、天井まで和漢の書物が積んであり、全て読了していた。

 ▼「佐藤先生の如(ごと)く老いたい」。渡部少年の願いは十分かなえられた。77歳のとき、2億円を超える借金をして家を新築し、友人たちを驚かせた。巨大な書庫には、なんと和洋漢の本15万冊が収蔵されている。80歳を超えてからも、ラテン語の名文句や英詩の暗記を欠かさず、「記憶力自体が強くなった」と豪語していた。

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