日本陸連が新たな代表選考方式を導入した理由は2つある。
1つ目は戦える選手を選ぶため。従来は五輪前の選考大会で好成績を出せば代表に選ばれていたが、新方式ではMGCシリーズとMGCレースの2度、結果を残さなければならなくなった。関門を増やすことで「調整能力」と「安定性」を見極め、自国開催の重圧の中でも力を出し切れる選手を選びたい考えだ。
また、選考過程を強化につなげる思惑もある。直近の五輪3大会で入賞はロンドン五輪6位の中本健太郎(安川電機)のみ。低迷への危機感は強く、「どうなるか分からないが、やっていかないと2020年に間に合わない」と瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダー。東京五輪への道筋を早期に示すことで、積極的にマラソンに取り組む機運を醸成したいという。
理由の2つ目は選考の透明性確保だ。かねて条件の異なる複数レースの結果を、日本陸連内で比較検討する形だった代表選考。専門家の目利きがメダルにつながった例はあるものの、微妙な裁定で議論を呼ぶことも少なくなかった。
河野匡・長距離・マラソン・ディレクターが「(代表から)外れる選手にしっかり理由を説明できなければ、選ばれた選手の頑張りもぼやけてしまう」と語るように、今回は曖昧さを極力減らそうという意図がある。
新方式を承認した臨時理事会に出席した一人は「反対はなかった。みんな新しいことに取り組まないといけないと感じている」と語っている。(宝田将志)