小規模体制で挑む本格時代劇
「幅広い年齢層に人気がなくなったから…というのが時代劇衰退の理由にされていますが、果たして本当にそうでしょうか?」と、現在も第一線で現代劇ドラマなどを撮っている井上監督は疑問を投げかける。
時代劇映画「すもも」は自主製作として2作目。第1作は戦国時代の摂津の武将、池田勝正を描いた「戦国の勝者」(27年)。24年から同市の時代劇ワークショップの講師を務めていた井上監督が受講生らを俳優に起用。同市のサポーターや企業の支援なども受けながら、資金援助を募るクラウドファンディング方式で完成させた。
多額の製作資金がかかることも、時代劇が作られなくなった理由の一つといわれている。だが、「戦国の勝者」を撮り終えた井上監督は、小規模の自主製作でも本格時代劇を撮ることができる自信を得たという。
かつての助さん、最後の黄門様も友情出演
「すもも」は幕末に生きる若い藩士、慎一郎(高杉瑞穂)が主人公。大阪の適塾で学んだ慎一郎は藩のエリートとして期待されていたが、大砲の演習中の暴発事故の責任を取らされ、藩を追われる。放浪中、行き倒れになっていたところを庄屋の宗右衛門(里見)に救われ、勧められるままに、百姓の子供たちを教える寺子屋を開くが…。
井上監督が構想を温めてきたオリジナル脚本。俳優はこれまで東京や大阪などのワークショップで教えてきた受講生や京都造形芸術大学映画学科の教え子たちが出演。照明や美術スタッフはテレビの時代劇ドラマを一緒に撮ってきた東映太秦の製作チームのメンバーらが協力。そして今作では重要な脇役として、シリーズ最後の水戸黄門で光圀を演じ、井上監督とタッグを組んだ盟友・里見さんが友情出演している。