浅田真央引退

真央とタラソワの愛の絆 世界を感動させたソチ五輪フリーの秘話

 しかし、タラソワは前年夏に直接、頼みに訪れた「真央の真摯(しんし)な気持ちを断ることはできなかった」という。

 SPでは16位。まさかのジャンプの失敗にタラソワは言葉を失った。

 浅田がこの4年間、つらい練習に耐え、どれだけソチ五輪にかけてきたかを知っているからだ。演技直前、タラソワは静かにつぶやいた。

 「力を奮い起こしなさい。私のかわいい真央、さあ、行くのよ。真央…」

 演技の冒頭、真央が代名詞のトリプルアクセルを見事に決め、次々にジャンプをこなすと、タラソワの声は一気に明るくなった。自らが教えた世界最高峰の舞いを、氷上の浅田は余すところなく体現していた。

ラフマニノフの旋律と2人の涙

 タラソワはいつの間にか席から立ち上がっていた。ただ拍手していた。エンディング。大粒の涙を流す浅田を前に、「辛くて見てられないわ」と一緒に泣いた。

 けなげに会場に笑顔を振りまく浅田に、次から次へ感謝の気持ちが口をついて出てきた。

 「真央。本当にありがとう。よくここまで仕上げたわね。あなたは素晴らしいスケーターよ。自分に打ち勝ったの」

 そうして、2人の2度目の五輪は終わった。ラフマニノフの旋律と4分間の華麗なドラマを、世界中のファンの記憶に刻んだ。

 忘れられぬエピソードがまだある。

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