聞きたい。

「ネットの膨大な情報にフィルターかけ有機野菜のような本を届ける」 大井実著『ローカルブックストアである』

 活動の原点に、20代のころにイタリアの町で見た風景がある。細い路地で、広場で、いつも人々は楽しそうに会話を交わしていた。

 「人と人との距離の取り方が絶妙で、それにはバールのような個人商店が果たす役割が大きい。自分も店を町の人がつながるホットな場所にしたかった」

 出版不況やネット書店の台頭など逆風は強い。でも「人生は解釈次第」と悲観はしていない。「今、ネット上の情報量はとてつもない。膨大な情報に一定のフィルターをかけ、フレッシュでうま味のある有機野菜のような本を届ける-。そんなコンパクトな町の書店はむしろ時代に合っている」(福岡ブックスキューブリック/晶文社・1600円+税)

 海老沢類

【プロフィル】大井実

 おおい・みのる 昭和36年、福岡市生まれ。同志社大文学部卒。ファッション関係のショーや現代美術の展覧会の企画に携わった後、福岡市のけやき通りに「ブックスキューブリック」を開業。平成20年に2店目の箱崎店を開いた。

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