都市を生きる建築(92)

モータリゼーションの波伝える「相互タクシー乗り場」時代反映したモダンで小さな建築

【都市を生きる建築(92)】モータリゼーションの波伝える「相互タクシー乗り場」時代反映したモダンで小さな建築
【都市を生きる建築(92)】モータリゼーションの波伝える「相互タクシー乗り場」時代反映したモダンで小さな建築
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 建築はいつの時代も社会を反映する。例えば近年減少の一途を辿(たど)っているガソリンスタンドは、誰もがマイカーを持てるようになった高度経済成長期に登場した新時代の建築だった。建築の革新は、新しい産業や社会構造の変化によってもたらされる。

 その当時、村野藤吾ら有名な建築家が、斬新な屋根をもつガソリンスタンドを数多く設計した。国土に張り巡らされていった、高速道路のサービスステーションにも目を引く建築が多かった。モータリゼーションの波は、新しい自動車だけでなく、新しい建築も生みだした。残念ながらその殆(ほとん)どはもう存在しないが、その輝きを今に伝える小さな建築が、キタとミナミの繁華街にある。相互タクシー乗り場だ。

 大阪を代表する繁華街のど真ん中に建つ2つの小さな建築は、道頓堀の「南のりば」が1953(昭和28)年に建てられ、「北新地のりば」は完成年がよくわかっていないが、おそらく昭和30年代に建てられたものだろう。近代建築史家の梅宮弘光・神戸大学教授の研究によれば、元々はハイヤーを配車するための営業所として建てられたものだという。

 相互タクシーを創設した多田清は大変な実行力を持つ独創的なアイデアマンだった。タクシー会社間の競争が激化すると低料金のハイヤー営業に力を入れた。当時繁華街にはタクシーの進入規制が引かれていたが、エリア内に営業所を構えることで、規制を気にせず進入できる優位性を確保した。