国際情勢分析

消えた90億円 「史上最大」のサイバー窃盗の背後に浮かぶ北朝鮮 外貨獲得ルート先細り原因か

 金融機関へのサイバー攻撃により大金をだまし取る犯罪を、北朝鮮が大がかりに展開させている可能性が浮かび上がっている。犯行には、過去に北朝鮮による犯行とされたサイバー攻撃を仕掛けたグループの関与が推認され、手口や組織性などから背後に北朝鮮当局の存在が色濃くにじむ。国連安全保障理事会の制裁決議などを受けて外貨獲得ルートが先細る北朝鮮が、サイバー攻撃による外貨獲得に必死となっている状況がうかがえる。

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 「史上最大」とされるサイバー窃盗が起きたのは、昨年2月。ニューヨーク連邦準備銀行が管理するバングラデシュ中央銀行の口座がサイバー攻撃を受け、8100万ドル(約90億円)が盗まれた。

 米紙ウォールストリート・ジャーナル(3月24日、アジア版)によると、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長暗殺計画を描いた映画を制作したソニーの米映画子会社「ソニー・ピクチャーズエンタテイメント」に対して、2014年にサイバー攻撃を仕掛けた「ラザルス」と呼ばれるグループが関与。米司法当局が北朝鮮による指示があったとみて捜査しているという。

 ソニー子会社への攻撃は、米連邦捜査局(FBI)がすでに北朝鮮の犯行だと断定しており、情報機関の偵察総局が関与したと目されている。

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