ビジネスの裏側

発明で損してる関西企業に支援拠点 特許庁が審査員派遣

特許庁が企業の知的財産活用を支援するための拠点を置くグランフロント大阪=大阪市北区
特許庁が企業の知的財産活用を支援するための拠点を置くグランフロント大阪=大阪市北区

 特許庁が今年9月までに商業施設「グランフロント大阪」(大阪市北区)に知的財産活用の支援拠点を設置する。定期的に審査官を派遣し、企業の特許出願を後押しする。ただ、関西は東京に比べ知財活用への関心は低い。競争力を高めるのに重要とはいえ、すぐには利益につながらないからだという。支援拠点は、そんな意識を変えていくことも期待されている。(板東和正)

不便さを解消

 「わざわざ東京に出張せなあかんのか…」

 平成25年9月。機械装置・部品メーカー「アイセル」(大阪府八尾市)の望月昇事業開発部長は、ため息をついた。出願した技術について特許庁から登録を認めない「拒絶理由通知書」が届いたのだ。登録のためには、特許庁に出向いて審査官のアドバイスを受ける必要がある。

 面談は電話やテレビ会議でも可能だ。だが、出願内容が分かる試作品を審査官に直接見せて話し合う方が円滑に進む。望月部長は「東京に出向くしかなかったが、出張費がかかり関西企業は損だと思った」と振り返る。

 しかし今回、グランフロント大阪北館タワーC9階の1室(約320平方メートル)に設置される知的財産活用の支援拠点「近畿統括本部」には、毎月第1金曜日と第3金曜日の2回、特許庁から複数の審査官が派遣される。面談を希望する企業は事前に出願内容に合った審査官を要望できるという。

「移転案」の代わり

 支援拠点の開設は、政府が見送った特許庁を大阪に移転させる案の代替策だ。

 大阪府は27年8月、中小企業が集積する現状などを踏まえ、特許庁の審査部門の一部の移転などを政府に要望した。

 だが、特許庁は「審査部門を一部移転すれば、審査官同士の情報交換に支障が生じ、審査の効率が下がる」(幹部)と指摘。政府は昨年3月、移転を見送り、代わりに出先機関の機能を強化する方針を示した。近畿統括本部の設置で、関西企業の知財戦略を十分に発展させられると判断したようだ。

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