産経抄

高峰秀子のお見合い結婚 4月5日

 香川県小豆島で映画「二十四の瞳」の撮影中の出来事である。主演の高峰秀子さんは、木下恵介監督に呼び止められた。「人間はボクが保証します。彼は将来必ず立派な仕事をする人間だと、ボクは信じてるんです。付き合ってみてくれませんか?」。

 ▼相手は木下監督の愛弟子(まなでし)、松山善三助監督である。高峰さんも、松山さんのまじめな仕事ぶりに好感を持っていた。ただ付き合うといっても、百人ほどの集団生活を続けている。二人は口をきくのもままならない。

 ▼「せっかちな木下恵介が、なんとかして彼と私を近づけようとヤキモキしているのがこっけいだった」。高峰さんは半生記『わたしの渡世日記』で、「お見合い」の顛末(てんまつ)をユーモラスにつづっている。二人は映画公開の翌年、昭和30年に結婚する。仲むつまじく添い遂げて、高峰さんは7年前、松山さんは昨年、世を去った。養女の松山明美さんは会見を開き、夫妻の遺産を小豆島町に寄贈すると発表した。

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