アート 美

「雪村 奇想の誕生」展 戦乱の世に愛らしい絵を描き続けた謎の画僧 尾形光琳も私淑

 明治時代以後はさほど注目されることなく、多くの作品がコレクターを通じて海外に流出。「竹林七賢酔舞図」といった有名作が米国のメトロポリタン美術館に収まっていることなどもあり、同国では雪舟よりも有名だという。近年は、大ブームを巻き起こした伊藤若冲や曽我蕭白、歌川国芳ら「奇想の画家」の先駆け的存在として注目されている。

 本展を監修した河合正朝・慶応大学名誉教授は「呂洞賓を描いた絵などは、まさに奇想天外。普通の絵ではない。そこに奇想の原点がある。雪村の作品からは個性を重んじる思想を見ることができる」と話す。

 しかし、奇抜さだけではなく、雪村は水墨画家にふさわしい本格的な山水画も数多く制作した。「夏冬山水図」はその代表作。水かさを増した激しい川の流れの音が聞こえてくるかのような夏景。それとは対照的に冬景の山は静まり返っている。葉を落とした木々の細い枝までも丹念に描き込まれていて格調高い。

 自然に対し鋭い観察眼を持った雪村は、小鳥や花、野菜など身近なものに優しい視線をなげかけ、温かみのある作品を残した。ユーモアにあふれた作品でも知られ、「欠伸布袋・紅白梅図」の大きな腹を突き出した布袋の姿は、なんともひょうきんで愛らしい。なごやかな顔の表情も魅力的だ。

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