文部科学省が道徳の教科書検定で、郷土愛不足を理由に「パン屋」を「和菓子屋」に書き換えさせた-。小学校で平成30年度から使用される教科書について、国や郷土を愛する態度を教えるため、文科省が修正を指示したとの疑念がインターネット上で拡散、文科省に抗議の電話が相次いだ。ただ、修正は教科書会社の判断に委ねられており、文科省が具体的に指示したわけではない。誤解の背景に何があったのか。(花房壮、寺田理恵)
相次いだ抗議電話
「こんな検定はやめろ」
3月24日の検定結果の公表後、土、日曜日をはさんだ27日、文科省教科書課には朝から抗議電話が相次ぎ、その件数は翌日にかけて30件を超えた。対応した職員によると、電話の主は大半が年配の男性だったといい、「パン屋」を「和菓子屋」に書き換えさせたとの誤解に基づいていた。
「和菓子屋」への修正があったのは、東京書籍の1年用の道徳教科書に収録された教材「にちようびのさんぽみち」。学習指導要領の内容項目「伝統と文化の尊重、国や郷土を愛する態度」に合わせた教材だが、「我が国や郷土」の要素が不足しているとみられた。ただ、検定意見は教科書全体に付けられた。
教科書全体に意見を付けられた場合、どの教材をどのように修正するかは教科書発行会社の判断だ。東京書籍は「パンやさんは、おなじ一ねんせいのおともだちのいえでした」としていた原文を、前後の文脈を変えて「にほんのおかしで、わがしというんだよ」などと修正。四季の移ろいを和菓子の色と形に乗せて表現するなど、国や郷土の概念をひらがなだけの平易な文章で児童に伝える努力をしている。