複眼ジャーナル@NYC

黄昏の「パクス・アメリカーナ」 ロックフェラー氏逝く ニューヨーク駐在編集委員 松浦肇

 忌み名を贈るなら、ミスター・米国型資本主義だろうか。先週、米国を代表する銀行家が逝った。富豪ロックフェラー家の三代目当主、デービッド・ロックフェラー氏。篤志家としても有名だった。

 デービッド氏の祖父ジョン・シニアは石油メジャー、スタンダード・オイルの創始者だ。一族の資産は最盛期で米国の国内総生産(GDP)の1割を占めたという。

 ロックフェラー家の資産を運用していた知り合いの紹介で、デービッド氏を取材したことがある。

 摩天楼を見下ろすロックフェラー・センターの事務所には、印象派の絵画が1メートルおきに飾ってあり、美術館に迷い込んだ気分になった。

 芸術を愛で、趣味はヨット。典型的な「大金持ちの子孫」だったが、確固たる信念の持ち主だった。

 1915年、ニューヨーク生まれ。取材当時のデービッド氏はかくしゃくたる老人で、真っ先に自由主義経済の効用を説き始めた。

 経済に行き詰まった国々で共産主義や全体主義が台頭した激動の時代に青春期を過ごした。その反動で、「『個人の自由』が前提になっている市場型経済の信奉者」になったそうだ。

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