中央卸売市場管理部市場政策課は「全頭検査が必要な被災県の牛も扱っている。被災県の牛だけ検査すれば、その県の牛は危険だから検査していると思われかねない。風評被害防止のために全頭検査は必要」と説明する。
◆流通が検査要求も
飛騨牛の生産地である岐阜県も全頭検査を実施。県は、28年度の検査費用約6千万円のうち約4千万円を負担、29年度もほぼ同規模の予算という。農政部畜産課は「この5年間で基準値超は一回もない。検査をやめたいが、検査証明書を求める流通業者もある。他の自治体が続ける以上、うちだけやめるわけにいかない」。
横並びの検査が続く中、検査を見直す自治体もある。松阪牛で知られる三重県は検査を外部へ移し、費用負担も行わないこととした。農林水産部畜産課は「検査費用を県が負担することで、実際は必要がない場合でも検査が行われてきた。自己負担なら不要な検査が減るのではないか」と期待を寄せる。
ただ、流通業者から検査証明書を求められれば、生産者は自己負担でも検査せざるを得ない。検査証明書を生産者に求めている大手流通は「消費者からの問い合わせはゼロではない。それにこたえるのに検査は必要」とする。
◆消費者に説明尽くせ
「検査をすることが安全対策と誤解している消費者もいるのではないか」
こう指摘するのは、内閣府食品安全委員会フェローの姫田尚さんだ。安全のために大事なのは、むしろ生産・加工の工程管理をしっかり行うことで、検査は工程管理が適切に行われているか、確認するものという位置付けだ。