宮家邦彦のWorld Watch

トランプ氏は「選挙モード」のままだ オバマケア廃止法案撤回を教訓に「統治」を始めるのか

 同法案採決の直前になってもトランプ氏は法案内容に懐疑的だった。議会対策の多くを共和党指導部に任せ、法案詳細を勉強せず、民主党議員に働きかけもせず、最後はトランプ氏の交渉力で押し切る心算だったという。これが事実ならこの先恐ろしい。ワシントンの政治はニューヨークでの不動産取引とは違うからだ。法案に反対した共和党議員にも有権者がいる。有権者にはその家族と友人がいるのだ。法案可決への情熱と努力を欠いたトランプ氏とその側近は「ワシントン政治」を甘く見たとしか考えられない。

 法案撤回の日、トランプ政権はカナダからのパイプライン建設を発表、税制改革議論も始め、法案撤回については「ひとごと」を決め込んだ。トランプ氏は今後も選挙キャンペーンを続ける気なのか。われわれはこの「危うさ」を肝に銘じるべきだ。現政権の対アジア政策が日本にとって今のところ有利に見えても、米外交は国内政治と直結している。今後、トランプ氏は今回の失敗から教訓を得てようやく「統治」を始めるのか、それとも相変わらず「選挙」を続けるのか。影響を受けるのは日本だけではない。

【プロフィル】宮家邦彦

 みやけ・くにひこ 昭和28(1953)年、神奈川県出身。栄光学園高、東京大学法学部卒。53年外務省入省。中東1課長、在中国大使館公使、中東アフリカ局参事官などを歴任し、平成17年退官。第1次安倍内閣では首相公邸連絡調整官を務めた。現在、立命館大学客員教授、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。

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