主張

雪崩事故 過信と油断が惨事を招く

 栃木県那須町のスキー場で、登山講習会に参加していた高校生らが雪崩に巻き込まれ、多数が死傷した。

 高校生らはいずれも県内の山岳部員、ワンダーフォーゲル部員で、山を愛する若者たちだった。山の安全を学ぶための講習が惨事の現場となってしまったことがなんとも痛ましく、残念でならない。

 那須町では事故当日、未明に急激な降雪があり、気象庁は雪崩注意報を出していた。春の暖かさで解けた雪が寒さの戻りで凍結し、その上に新雪が積もれば「表層雪崩」が起きやすい。

 雪山の常識である。生徒らを引率していたのは、登山経験が豊富なベテラン教員らだった。降雪から当初予定の登山訓練を中止して変更した、積雪をかき分けながら進む「ラッセル訓練」の最中に雪崩は発生した。

 県警は業務上過失致死傷容疑で那須塩原署に特別捜査班を設置した。悲惨な事故を繰り返さないため、教員らの判断に誤りはなかったか、検証を徹底すべきだ。

 登山講習会は県高体連の主催で昭和38年以降、事故が起きたスキー場で毎年実施されてきた。今回の講習会には県内7校の62人が参加していた。

 事故時に生徒らは、遭難時に位置を特定するビーコン(電波受発信器)を装備していなかったとされ、安全対策にも疑問がある。ラッセル訓練そのものが雪崩を誘発する可能性も指摘される。

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