野口裕之の軍事情勢

北朝鮮の金正恩氏が影武者を抱えても米軍の斬首作戦に脅えるワケ 「死の白鳥」が舞う時、死が訪れる

 金委員長が座して死を待つわけがなく、2010年以降、南北境界線付近でのGPS妨害を目的とした電波妨害(ジャミング)を強化している。ただ、そんな受け身の姿勢で安心する金委員長ではない。

 北朝鮮空爆の策源地となる佐世保や岩国に所在する在日米軍基地やグアムの米空軍基地に向け、射程に収め終えた《スカッドER》や《ムスダン》といった核ミサイルを発射する確率は極めて高い。

 もちろん、米軍は織り込み済みであろう。戦略爆撃前にサイバー攻撃や電波妨害を仕掛け、朝鮮人民軍の「目」「耳」「口」を封じ、レーダーや通信手段を遮断。通常戦力のみならず、核戦力をもマヒさせるだろう。

 いや、既に作戦は始まっている、と小欄は確信する。例えば、性能を上げ続け、発射実験を成功させている北朝鮮にしては珍しく、3月22日朝に発射したミサイルは数秒後に爆発した。爆発に関する米国防総省・報道部長の表現に、小欄は米軍によるサイバー攻撃や電波妨害の影を見る。

 「破滅的な爆発」

 3月4日付の米紙ニューヨーク・タイムズも、2014年初頭、バラク・オバマ大統領が国防総省に、北朝鮮のミサイル発射実験失敗を誘発すべく、サイバー攻撃や電波妨害を強化する作戦を命じていた、と報じた。実際、2016年の4〜10月にかけ、ムスダンが空中爆発を繰り返している。批判を承知で後付けするが、小欄と、小欄と親しくしている安全保障関係者の間では、発射実験の連続失敗が米軍のサイバー攻撃&電波妨害に起因するのか否か、注目テーマとして浮上していた。

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