野口裕之の軍事情勢

北朝鮮の金正恩氏が影武者を抱えても米軍の斬首作戦に脅えるワケ 「死の白鳥」が舞う時、死が訪れる

 以前は、軍用機などプラットフォームが爆弾を目標近辺にまで運ぶ必要があった。だが、この伝統的空爆では搭乗員が対空砲火を避けようとして、爆弾が目標に投下される前に回避行動に移る。結果、命中率を低下させていた。GPSを爆撃に転用したウォーデン大佐の発想は、搭乗員の戦死を極小化しつつ、命中率を目を見張るほど引き上げた。

 しかし、湾岸戦争はまた、多くの解決すべき課題も突き付けた。使用した衛星の多くは、核ミサイルの指揮・統制やミサイル発射基地などの偵察・監視、弾道ミサイルの早期発射情報確保に象徴されるが、冷戦時代に特化した戦略目的に傾斜していた。技術的にもGPS誘導はまだ少なく、「レーザー誘導」「カメラ(光学)によるTV誘導」などが主流で、悪天候時の運用には限界があった。

 その点、イラク戦争(2003年)での命中精度は革命的であった。

 《B-2ステルス戦略爆撃機》はGPSを活用した精密誘導爆弾JDAMを16発、《B-1B戦略爆撃機》は24発も携行できる。各爆弾1発で1目標を破壊でき、飛行回数減少にも貢献した。つまり、1回の出撃で16〜24目標を破壊しうるのである。

 当然ながら、米本土より通信衛星を介して遠隔操作される無人攻撃機もフォローする。

 かくして、指揮・統制司令部+核・化学・生物兵器などをミサイルに搭載した大量破壊兵器の発射基地や保管施設+レーダー・通信網+電力施設など、軍事の中枢や関連インフラは粉砕されていく。

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