革命的成長を遂げた精密誘導爆撃の精度
第二次世界大戦(1939〜45年)において、ドイツ本土の戦略爆撃を行い、ドイツの工業力を弱体化させ、ドイツ降伏を早める一助を担った米軍の《重戦略爆撃機B-17》。目標との爆撃誤差が700メートルも生じ、命中率を90%まで高めるには、何と9千発の爆弾を投下しなければならなかった。かかる戦果をあげるには、1千機の出撃を強いられる上、搭乗員1万人の命を危険にさらす前提を伴った。
ベトナム戦争では、空爆精度は進化を遂げたとはいえ、《F-4戦闘機》が1目標を破壊するために、自由落下(無誘導)爆弾176発が必要で、飛行回数も30を数えた。
劇的変化は、宇宙空間を利用して軍事作戦を遂行し、「宇宙戦争の幕開け」と位置付けられた湾岸戦争(1991年)で起こった。《F-117ステルス対地攻撃機》は搭載する2発のレーザー誘導爆弾で、一度に2目標を破壊した。
ここで、湾岸戦争の作戦計画を担任した米空軍のジョン・ウォーデン大佐の発想=戦功を記しておきたい。
ウォーデン大佐はGPS(全地球測位システム)が正確に目的地を判定できる点に着目し、GPSを爆弾に取り付けて位置情報の変化を与えて誘導する戦法を編み出した。外部の誘導なしに、設定された座標へ着弾させる精密誘導爆弾でJDAM(ジェイダム)と呼ばれる。