正論

4月4日は「養子の日」 社会的養護の柱に養子縁組を 社会全体の覚悟と決意が必要 日本財団会長・笹川陽平

 施設や里親のもとで暮らす子供たちと養子縁組希望者の情報を全国的に集約し、双方のマッチングを広く調べることを可能にするネットワークの整備も欠かせない。情報が増えればその分、養子縁組が成り立つ可能性も上昇する。

 厚生労働省の資料によると、不妊治療を受ける夫婦は全国で40万組を超え、一方で年間の人工妊娠中絶件数は新生児数の約20%に相当する18万6千件(13年度)に上っている。養子縁組を希望する夫婦は多く、妊娠中絶の中にも子供の将来を確実に託せる養親希望者が早い段階で確保できれば助かる命も多いはずだ。

 もう一点、養子縁組を困難にしているのが養子縁組を望まない保護者の意向だ。わが国では伝統的な家制度の影響か、親権に対するこだわりが強い。厚労省調査では養子縁組に同意しない保護者が多く、その分、養子縁組が進まない一因となっている。

 ≪優先されるべきは子供の幸せ≫

 一方で乳児院の子供3千人のうち610人は親の面会が一切なく、親の責任が放棄された状態にある。こうしたケースに関しては親権を制約できるような法的枠組みも必要と考える。何よりも子供の幸せが優先されるべきは言うまでもない。

 仮に施設から里親、さらに特別養子縁組への移行が進み、全国136カ所の乳児院や603カ所の児童養護施設で働く約2万人の職員に余力が出れば、子供の反発や問題行動に悩む里親家庭に対する支援組織や「子育て世代包括支援センター」といった総合的な相談組織の整備も前進しよう。

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