全人代閉幕後の李克強首相の記者会見に産経新聞記者が日系メディアで唯一出席を拒否されたのは、日頃さまざまな制約の中で、中南海の動向や中国の内情に対して客観報道に努める外国メディアへの妨害・圧力に等しい。強く抗議する。
中国による報道規制の強化は、2013年3月に国家主席に就任した習近平氏の権力集中のプロセスと同時並行で進んでいる。
中国高官の蓄財問題を報じた米紙ニューヨーク・タイムズや米通信社ブルームバーグへの報道ビザ発給拒否が問題化したが、これは外国メディア規制の常套手段ともいえる。14年の中国外国人記者クラブの調査でも、約3分の2が「妨害を受けた」と答えた。
産経新聞も、中国総局長へのビザ発給が昨年9月まで3年以上凍結された。駐在記者への不審な尾行や取材妨害は日常茶飯事である。最近でも「世界を席巻している」と政府が自賛する現代版シルクロード構想「一帯一路」の現状を取材しようと地方出張した記者が地元当局の取材拒否にあった。
当局は本紙報道を詳細にチェックしており、意に沿わないニュースへの抗議としてわれわれが呼び出しを受ける頻度も増している。
産経新聞はこの全人代で北京・上海駐在の3人に加えて記者2人を東京から派遣した。中国の国防費や経済成長率の見通しを冷静に分析するとともに、「核心」と位置づけられた習氏の指導体制の変化についても、独自取材や報道に努めた。