中島さんは「相手の城を攻める際、田が深いか浅いかはとても大切な情報だった」と話す。
幾つかの例を挙げると、稲の切り株が短く、均一に刈られていると「浅田」だが、切り株に長短があり、きれいに刈られていないと「深田」だという。また、「浅田の畦(あぜ)は高く広く堅くして落入る(崩れた)所もなく…」とか、「くれの涌田(鉄分が多く茶褐色の水が湧出している田)は大いに深田なり」などと見分け方が書かれている。
こうした知識は、普段農業をして暮らしていたからこそのものだという。
のどの乾きを癒やすには…
戦国時代には、実際に相手の城に忍び込んで内情を偵察するなど特殊な任務についていただけあって、極限状態の中でどう生き延びていくか、「食」についての記載もある。
のどが渇いたときに用いるようにと、軍用秘記に記されているのが「水渇丸」。梅干しの肉を打ちつぶしたものを「一両(約37グラム)」、氷砂糖を「二匁(約7・5グラム)」、そして麦門冬(ばくもんどう)「一匁(約3・7グラム)」を粉末にして丸める-と記されている。
麦門冬とはユリ科の植物「ジャノヒゲ」の根の塊状部を乾燥させた薬で、せき止めや消炎、滋養強壮などにも使用された。今も漢方薬として販売されている。
医学博士でもある中島さんによると、酸味が強い、つまりすっぱいものを食べると、軽いのどの乾き程度なら抑えることができるという。