平成30年史 大震災の時代

(5)「予知」との決別、踏み切れず 地震学の苦悩…態勢見直しに「東海地震」の呪縛

 では、どうすればよいのか。一つのアイデアは「数日以内に地震が起きる」という直前予知の警報ではなく、「発生の可能性が高まっている」などの注意報を出すことで、社会に役立てるという考え方だ。黄色信号への転換ともいえる。

 ゆっくり滑りと呼ばれる特殊な地震のデータなどを活用し、大地震につながる可能性について情報を発信。現行の警戒態勢は大幅に緩和する。

 作業部会の主査を務める東大教授(観測地震学)の平田直氏(62)は「食料備蓄の確認など、空振りでも損害が過大にならない範囲で社会が備えられる」と利点を指摘する。山岡氏も「警察や消防、自衛隊が一部でも被災地にシフトしておけば救える命が増える」と話す。

 ただ、問題はどこまで意味のある注意報を出せるかだ。名古屋大教授(地殻変動学)の鷺谷威氏(52)は「推定される地震の場所や時間、規模はいずれも大きな不確かさを伴う。不確かさの程度すら分からない」と警鐘を鳴らす。危険度のランク分けも困難で、かえって社会の混乱を招く恐れも否定できない。

 南海トラフのどこかで大地震が起きる確率は30年以内に70%に及ぶ。今世紀前半の発生が懸念され、対策の遅れは許されない。

 東海予知の呪縛を解き放ち、新たな減災の枠組みをどう作るのか。阪神大震災から22年、東日本大震災から6年を経た現在も、その道筋は見えていない。