平成30年史 大震災の時代

(5)「予知」との決別、踏み切れず 地震学の苦悩…態勢見直しに「東海地震」の呪縛

 「予知は困難とする国の報告から2年以上たったが、大震法の見直しは手つかずで、このままではまずいと感じていた」

 吉田氏は今、こう断言する。「地震がいつ起きるか正確に予知することはできない。地震学がどれだけ進歩しても、状況は変わらないだろう」

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 東京・大手町の気象庁には、地殻変動のデータがリアルタイムでモニター画面に表示される部屋がある。

 今、この瞬間も職員が24時間態勢でデータを監視している。東海地震の前兆現象を捉えるためだ。

 時折、アラームが鳴り響く。計測値に一定の変化が出たのだ。そのたび室内に緊張が走る。だが、本物の前兆だったことはない。

 東海地震が「いつ起きてもおかしくない」とされてから既に40年がたつ。

 「前兆を捉えようと日々努力している。それ以上は言えない」

 担当する職員は言葉少なだ。

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 大震法の見直しについて、国は昨年6月、作業部会を設置し、ようやく見直しの議論を始めた。

 対象地域を、現在の東海だけでなく西日本を含む南海トラフ全域に拡大するかどうかが論点の一つだ。だが、課題も明らかになってきた。

 予知に対する自治体の温度差だ。

 「予知を前提にした議論は捨て去った方がいい。住民は予知が出るまで安全と思い、不意打ちに耐えられなくなる」。高知県の尾崎正直知事(49)は1月の会合で、こう主張した。