「学校も先生も大きらい。いままでなんかいも死のうとおもった」。9日付の小紙朝刊に、東電福島第1原発事故で福島県から横浜市に自主避難し、いじめを受けた中学1年の男子生徒の手記全文が載っていた。住み慣れた自宅を離れ、新たな居場所を求めた先で黴菌(ばいきん)扱いされた生徒の心境を思うと、胸がつぶれる。
▼朝日新聞と福島大の今井照(あきら)教授が今年1〜2月に実施した共同調査によると、避難先でいじめや差別を受けたり、被害を見聞きしたりしたことがある避難者は62%に上る(2月26日付同紙朝刊)。大人でもそうなのである。
▼「お米はすべて福島県産を使用しています」。安倍晋三首相夫人の昭恵さんも時折利用する首相官邸2階の食堂には、こんな貼り紙がある。政府は風評被害払拭を図っているものの、人の心に巣くう偏見や思い込みは、なかなか取り除けない。
▼根拠のない不条理ないじめや差別が後を絶たない背景には、新聞やテレビ、一部政治家らが過度に放射能の危険をあおったこともある。大人社会の偏見は子供に伝染し、心をむしばむ。小紙も轍(てつ)を踏まぬよう肝に銘じたい。