朴槿恵氏がとうとう大統領を罷免されてしまった。朴政権と500日あまり法廷の内外で争った身ではあるが、不思議と特別の感慨は湧かなかった。むしろ、寂しく大統領府を後にすることになる朴氏が昨秋以来、これまで経験した労苦をねぎらいたい気持ちだ。
罷免は朴氏の身から出たさびの面もあり、また大方の予想通りでもあったから驚きもしなかったのだが、韓国の「国民情緒」の怖さは改めて思い知った。
韓国では、よく自嘲的に「憲法の上に国民情緒法がある」と語られる。一度、情緒の流れができてしまうと力を持つ主体が次々とわれ先に世論にひれ伏し、国民情緒の前で正義の味方を演じ政治・社会的地位を上げようとする。
それまで大統領に忠誠を誓っていたものが手のひらを返して「民心」の下僕となる。
今回、憲法裁判所の判決が近づくにつれ韓国では、朴氏の罷免に反対する勢力が言論(メディア)▽検察▽国会▽労組-を「4賊」と批判した。
「100万人」の抗議集会の流れを作った労組以外の3つの勢力は、流れの尻馬に乗って「弾劾」を推し進めた。3月以降は「罷免反対」の世論も相当にあったが、時すでに遅く、巻き返しはできなかった。