野口裕之の軍事情勢

「核攻撃力を持った途端、金正恩は死ぬ」 米高官の警告直前の地中貫通核爆弾投下試験公表は斬首作戦の前触れか

 ラッセル発言の6日前、奇妙な符号もあった。有事に備え、米軍核兵器の機能性を維持・発展させることなどを目的とする《国家核安全保障局=NNSA》が、《地中貫通核爆弾B-61》投下試験を前月に空軍と合同で実施したと、B-2ステルス爆撃機を使った爆弾投下の資料写真とともに公表したのである。機密扱いの核関連試験の公表は異常事態と言い切ってよい。

 昨秋はピンとこなかった「正恩向け死の通告」と「地中貫通核爆弾投下試験の公言」が、正恩氏の異母兄・金正男氏の毒殺で、にわかに意味を持ち始めた。米国の「ヤル気」だ。

 米国本土に届くICBM(長距離弾道ミサイル)は完成間近。核報復が可能となる核保有国になれば攻撃は困難で、米国は北朝鮮との交渉に入らざるを得ない。米国にとり、残された時間は極めて少ない。正恩氏を排除する作戦は、実施の有無ではなく、いつヤルかに移っている。

 「正恩向け死の通告」の4日前、言い換えると「地中貫通核爆弾投下試験」公表の2日後、米シンクタンク・ランド研究所は《北朝鮮は4年以内に50〜100個の核兵器を保有し、核弾頭を装填したICBMで米本土攻撃能力を持つに至る》との分析報告を発出した。しかも、北朝鮮は金正男氏毒殺で、米国が核兵器同様、大量破壊兵器=化学兵器として最も警戒する猛毒の神経剤VXを使った。

 後で紹介するが、小欄が加わった安全保障関係者のシミュレーションでも、米軍が北朝鮮に仕掛ける攻撃の確率は驚異的な数字をはじき出した。

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