産経抄

人々の暮らしも行政マンの良心も土深く葬られた 豊洲市場問題の真相は解明されるか 3月5日

 都合の悪いものを隠すのに、土は都合がいい。とある県の、とある島に産業廃棄物の処分場計画が持ち上がった。反発する島民に、県庁職員いわく「木くずなどをエサにしたミミズの養殖です」。業者の言い分を真に受け、事業許可を与えている。

 ▼業者が始めたのは、車の破砕ごみや廃タイヤ、廃油の不法投棄と野焼きだった。泣きつく島民に、県庁職員は「金属回収です」。業者には「古物商」の届けを出すよう裏で助言していたと、後で分かった。瀬戸内海に浮かぶ香川県・豊島で実際にあった事件である。

 ▼土深く葬られたのは人々の暮らしであり行政マンの良心だろう。豊洲市場に同じにおいがする。移転の経緯も汚染土壌の責任の所在も、盛り土問題の不始末も、元都知事の会見で掘り出された真相は何一つない。石原慎太郎氏の名誉も土をかぶったままではないか。

 ▼小池百合子知事をなじる言葉や「私一人の責任ではない」「記憶がない」との釈明に鼻白んだ人は多いはずである。石原氏は近く都議会百条委員会の証人喚問を受けるという。一言居士の歯切れの悪さを見るかぎり、事の真相を掘り当てるのは、なかなか骨だろう。

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