猫をかわいがる「名物おじいちゃん」
40年近く前に建設され、9つの住居棟と商店街が一体になった都営調布くすのきアパート。山本さんは古くからの住人で、知らない人はいない名物おじいちゃんだった。
近所の老人ホームに入所している妻の見舞いを日課にしており、足が悪いため、いつも手押し車を押しながら歩いていた。年金の支給日を心待ちにし、友人と将棋をたしなんだ。「お茶目な性格で、恨みを買うような人じゃない」と、近所の人々は口をそろえた。
元気な姿が事件前日まで目撃されていた。「100歳まで頑張らないと」。近所の住人が体を気遣うと、そう笑って返していたという。
団地に住み着いた猫をかわいがっていた山本さんは、猫が部屋に入ってこられるよう、ベランダの窓を少し開けておくことがあった。孫の建築会社社員、山本裕也容疑者(23)はそこから侵入した。
絶対返さない奴
裕也容疑者は山本さんの孫で、年金支給日のたび、カネの無心に訪れては「孫がカネを返してくれない」と山本さんを困らせていた。
関係者らによると、裕也容疑者は幼いときに両親が離婚。山本さんが面倒を見ていた時期もあったが、素行が悪く、家を追い出されたという。裕也容疑者は周囲に「家族に捨てられた」と漏らしていた。
仕事を転々とし、唯一の趣味はパチンコだったという。かつて裕也容疑者が「大虎小虎」の源氏名で働いていたホストクラブでは、同僚から「カネを借りても絶対に返さない奴」として有名だった。カネを借りてはパチンコに行き、家族や知人のほか、消費者金融からも数十万円の借金をしていた。