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海中で隠密行動を展開し、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を搭載している潜水艦は、四方を海に囲まれた日本にとって大きな脅威だ。われわれの目につかない海面下では、国内外の潜水艦の間で駆け引きが繰り広げられている。
海底にケーブルや観測機器などを設置する海上自衛隊の敷設艦「むろと」は、対潜水艦戦を有利に進めるためのデータ収集に努める支援艦だ。それだけに任務の機密性は非常に高く、海自関係者も思わず言葉に詰まるほどだ。
潜水艦が活動する際は、音波が大きな役割を果たす。海中では電波がすぐに減衰して使い物にならないため、代わりに音波が通信や、真っ暗な海中での索敵などに用いられている。
ただ、音波が海中を伝わる距離は一定ではない。水圧や水温、塩分濃度などによって異なり、それらは水深や潮流といった海中の環境に左右される。潜水艦の乗組員によると、冷え切った海中では音が非常にはっきりと聞こえ、逆に温かい海中では音によどみや曇りが生じるという。
むろとの任務の1つは、そうした海中の状況を観測する装置の設置や、観測データを送信するための海底ケーブルの敷設だ。観測データの蓄積により、その時々の状況に応じた音波の伝わる距離を把握しやすくなる。
音波が伝わる距離は敵潜水艦を探知したり、逆に探知されることを防ぐために重要な情報だ。加えてむろとは、海自が必要とする海域で、海底に固定型のソナー(水中音波探知機)を設置することもある。