食革命 人工肉の行方

(中)細胞培養「食糧難克服に貢献するが私は食べたくない」 衛生的に製造も不安拭えず

 聴衆の視線が会場に設置されたスクリーンの映像にくぎ付けになった。パスタや野菜とともに盛りつけられたミートボール。女性がフォークで少し切り取り、恐る恐る口に運んだ。

 「これ、おいしいわ」

 昨年2月、米サンフランシスコ。ベンチャー企業が資金を募る投資家向けのプレゼンテーション大会でのことだ。ミートボールに使われたのは、牛の細胞を培養した「人工肉」である。

 開発に成功した米ベンチャー企業、メンフィス・ミーツの最高経営責任者(CEO)、ウマ・バレティ氏は壇上で映像を交え、効率的、かつ衛生的に製造できる人工肉のメリットを強調した。

 米ウォールストリート・ジャーナル紙によると、人工肉の作り方はこうだ。生きた牛から採取した細胞に酸素や栄養素、牛の胎児の血液から作った血清を加えて培養する-。

■「もはや農業ではない」

 昨年5月、三重県で開催された主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)。初日のディナーでは、松阪牛のヒレ肉が振る舞われ、首脳陣の舌を満足させた。

 「おいしい肉は、代々の畜産農家たちが積み上げてきた牛づくりの匠(たくみ)の技だ」。松阪牛の産地、三重選出の自民党衆院議員で、農業に精通した三ツ矢憲生氏(66)は語る。

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