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【ソウル=桜井紀雄】世界を揺るがした北朝鮮の金正男(キム・ジョンナム)氏殺害事件。母国で最高権力の座に就いた異母弟、金正恩(ジョンウン)朝鮮労働党委員長の生い立ちと比べると、正男氏の悲哀の人生が浮かび上がってくる。
「私たちは一度も顔を合わせたことのない兄弟だが…。私と家族を助けて下さい」
韓国情報機関によれば、正男氏が2012年4月に正恩氏に送ったとする手紙にはこうつづられていた。家臣が王に嘆願するように、命を狙う命令の取り消しを切々と訴えていた。
正男氏が命を狙われたのは一度や二度ではない。正恩氏が金正日(ジョンイル)総書記の後継者に内定した直後の09年4月、正男氏の支持者が集まった平壌の別荘を秘密警察が襲撃。消息筋は「正恩氏の指示だった」とみる。
中国で10年に交通事故を装った暗殺を計画した秘密警察の要員が後に韓国で逮捕された。中国当局は北朝鮮に「中国でそんなことはするな」と警告し、北京やマカオで暮らす正男氏の警護を強化したという。