アメリカを読む

「米中すでに貿易戦争の状態」政権で存在感増す対中国強硬ブレーン、ピーター・ナバロ氏の揺るがぬ姿勢

 こうしたナバロ氏の主張に対しては多くの経済学者から批判が出ている。恒常的に貿易赤字を抱える米国では貿易赤字の大きさが経済活動や雇用の弱さの表れだとはとはいえないことや、中国に対する強硬姿勢は中国からの報復措置を招いて「貿易戦争」に至る懸念があり、かえって米国経済にマイナスになるなどとの指摘は多い。

 しかし米国では歴代政権が中国との経済関係強化を目指す一方で、米国内での製造業の衰退が見過ごされてきたことは事実だ。またナバロ氏が指摘する中国の不正な貿易慣行はオバマ前政権下でも繰り返し指摘されてきた内容で、ナバロ氏だけが主張する極論というわけではない。こうした不正を是正することの重要性はナバロ氏を批判する側も認めているところだ。

 また「貿易戦争」を引き起こすとの懸念については、ナバロ氏は昨年9月に発表した論文で「米中はすでに貿易戦争の状態にある」と一蹴。自らが提案する政策は貿易戦争を終わらせるためのものだと位置づけている。

 トランプ氏は選挙戦中から、こうしたナバロ氏の主張の多くを演説などに取り入れてきた。製造業を取り戻し、米国を再び偉大にするというトランプ氏のスローガンは、現実に中国企業との競合にさらされる企業で働く製造業関係者の耳には心地よく響く。