唐津で玄海原発の住民説明会 容認の声許さぬ雰囲気

 佐賀県が九州電力玄海原発3、4号機(玄海町)の再稼働に関する住民説明会を県内5カ所で順次、開催している。21日夜に唐津市で開かれた初回の説明会では、一部の反原発派が持ち時間を越えて自己主張をし、大声を出して説明者の発言を妨げた。過激な反原発の声が満ちた会場は、原発賛成派や容認派が意見を出せる雰囲気ではなかった。 (高瀬真由子、中村雅和)

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 玄海3、4号機は1月、再稼働の前提となる原子力規制委員会の安全審査に合格した。説明会は、審査の概要や東京電力福島第1原発事故を教訓にした安全対策などを周知し、県民の意見を聞く場として、佐賀県が主催している。

 参加者全員にイラストや写真を駆使した4冊計182ページの資料が配布された。資料に沿って原子力規制庁、資源エネルギー庁、内閣府、九電の担当者が説明した。

 説明後、質疑応答の時間が設けられた。大地震の影響などを尋ねる質問もあったが、反原発派のボルテージは徐々に上がる。

 「福島の事故の責任を取った人がいるのか。福島の被災者に、『再稼働(する)』と倫理としていえるのか。一つの企業のために再稼働をやっている」

 ある男性は、延々と自己主張を続けた。

 「福島の事故を踏まえているというが、軽々しくその言葉を使ってほしくない。福島の人はみんな怒っている」

 自身が福島県民を代表したかのような決めつけ発言は、まだおとなしい方だ。

 「根性をたたき直して出てきなさい」「ごまかしだ」「ふざけるな」「そんな話はいらねえ!」

 国や九電へのヤジが飛ぶと、拍手と歓声が沸き起こった。その様子は、川内原発再稼働をめぐる3年前の鹿児島県の説明会と同じだった。

 別の男性は説明者に食ってかかった。「節電要請すらされていないのに、電気が足りていないふりをして、原発を動かそうとしているようにしか思えない」

 資源エネルギー庁の覚道崇文課長は「電気が足りているようにみえるが、コストがかかっている。二酸化炭素の排出量も増えている。全てのエネルギー源には長所短所がある。それを踏まえると、一定程度は原子力発電を行わないといけない」と説明した。

 九電の山元春義取締役は「福島の事故後、(原発停止で)電気が足りず、節電のお願いもした。廃止していた火力発電所をもう一回動かし、他電力から電力を買って届けることが続いた。電気の安定供給には、玄海(原発)の再稼働が必要と考えている」と語った。実際、原発の長期停止は、電気料金の値上げや節電要請をもたらした。

 こうした説明にも、反原発派は「命より金か」とヤジを飛ばす。

 主催する県は、より多くの意見を聞く目的で、質問は1人1問、時間は1分と案内していた。持ち時間の終了を知らせるボードも準備していた。

 だが、この要請を無視する発言者が相次いだ。

 発言が2分を超えたところで「時間がないので…」と司会者に終了を促された男性は、「もうすぐ終わる。あなたが(そう)言わなかったら、それだけ早く終わるんだ!」と怒鳴り返した。

 反原発派の集会のような雰囲気に、会場からは不満の声がもれた。

 唐津市の男性(78)は「どちらかといえば再稼働に賛成だが、反対派が多く、賛成の人が発言できる雰囲気ではなかった。説明者に、拍手をしたい気持ちになった」と語った。

 声高に叫ぶ人への批判は、原発反対派からさえ出た。自営業の男性(30)は「あの人たちはヤジを飛ばしてすっきりするかもしれないが、身内以外は引いてしまう。あんなやり方では、無関心な人たちの共感は決して得られない」と話した。

 2時間半を予定していた説明会は、終了予定時刻の午後9時を1時間近くオーバーした。

 会場の外では、反原発派や団体が「原発の恐怖を伝えています」などと言いながら、再稼働反対のチラシを配った。川内原発再稼働の反対運動に参加した人の姿もあった。

 この説明会の様子をメディアは「玄海再稼働巡り住民説明会 不安の声相次ぐ」(共同通信)などと報じた。

 だが、反原発派の過激な言動は、エネルギー政策や原発の安全対策について冷静に説明を聞き、議論したい人を、説明会から遠ざける。唐津会場は定員1200人に対し、訪れたのは192人だった。

 佐賀県新エネルギー産業課の担当者は「話をしている人を、さえぎることは難しい。1分でご意見が収まりきれない場合もあると思うが、今後もご協力をお願いする」と話した。佐賀県は3月3日まで、県内計5カ所で説明会を開く。福岡県なども糸島市で3月23日に開催する。

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