軍事研究が「タブー」のままでいいのか。防衛省が大学や企業などを対象に研究費を助成する公募制度をめぐり、研究者の間で議論が起きている。過去の戦争への加担を反省し、日本の学術界は軍事研究と距離を置いてきた背景があり、「防衛省の研究への参加=戦争に加担」といった極端な〝軍事アレルギー〟を示す研究者も少なくない。すでに公募参加の禁止を決めた関西大などの例もある。ただ、科学と軍事の研究境界線はあいまいな部分が多く、世界を見渡せば、相互に協調して技術力や防衛力の向上につなげている国が目立つ。日本の大学の国際競争力低下の背景には、研究資金不足や学外との共同研究の少なさもあるとされる。「自衛レベルの研究は許されるべきだ」「軍事研究は兵器研究ではない」-。現実に即した対応を求める声も上がりつつある。(細田裕也)
浮上する「現実論」
「平和利用の哲学がない科学技術は凶器だ」「このままでは世界中から不信感を抱かれる」
2月4日、東京都内で開かれた科学者の代表機関である「日本学術会議」のシンポジウム。接近する学術と軍事の現状などをテーマに、内外からの意見を聴取するために開催されたのだが、参加者からは批判的な声が次々と上がった。
議論の的は、防衛省の公募制度「安全保障技術研究推進制度」。防衛分野にも応用可能な研究を支援しようと平成27年度に創設された。防衛省の外局・防衛装備庁がテーマを決めて募集する。同庁によると、研究には3年間で最大9千万円を支給するが、2年間で153件の応募があり、19件が採択された。政府は来年度の予算案に今年度(約6億円)の約18倍となる約110億円を計上している。
この制度をめぐり、学術会議が揺れているのだ。