浪速風

菜の花で知る司馬さんと凡夫の差

司馬遼太郎さん
司馬遼太郎さん

日本人の感性の豊かさだろう、風の名前は2千以上もあるそうだ。「二十四番花信風(かしんふう)」は、小寒から穀雨までの八節気二十四候に、折々の花が咲くのを知らせる風である。雨水の初候にあたるこの時期は菜の花。18日に司馬遼太郎さんをしのぶ「菜の花忌」が催された。

▶江戸時代、夜を明るくしたのは菜種油である。菜の花は観賞用、食用よりも、油を採るために栽培され、上方から江戸へ船で運ばれた。何かの事情で江戸に船が入らないと、油の値段が高騰し、「油切れ」と騒動になったという。司馬さんは、海運業で財を成した高田屋嘉兵衛の波瀾(はらん)万丈の生涯を描いた。

▶「『菜の花の沖』という奇妙な題名をつけたのも、菜の花によって江戸期の商品経済を象徴させたかったためである」。書斎の前の庭に植えた菜の花を見ながら、構想をふくらませたのだろう。菜の花忌でいただいた花を花瓶に生けたが、凡夫には何も浮かばない。ただ、春が近いのはわかった。