マレーシアのクアラルンプール国際空港第2ターミナル。北朝鮮の金正男(キム・ジョンナム)氏が殺害された国際線出発ロビーは15日、詰めかけた国内外の報道陣を横目に多くの旅客が通常どおりに行き交っていた。
「毎日、多くの旅客が体調を崩してカウンターを訪れる。まさかそれが事件だとは誰も思わなかった」。ある空港職員はこう話し、誰も犯行に気づかず、その後も封鎖されずに旅客を迎え続けていた当時を振り返った。
ターミナルの3階入り口から、約50メートル離れたところに正男氏が助けを求めたとされる案内カウンターがある。そこからさらに約100メートル進むと、搭乗券などを職員が確認する出発口がようやく現れる。朝の混雑時に、公共の場で大胆に行われた凶行。犯人は何のセキュリティー検査も受けず、やすやすと背後から迫り、襲撃に及んでいた。
犯行後、正男氏が運び込まれた診療所は2階にあり、診察室と処置室を備える。表に準備されたストレッチャーが、正男氏にも即座の救急処置が施されたことを思い起こさせた。
犯行現場前のコーヒー・ショップ「スターバックス」の女性店員は、「当日は、警察が集まりだして、初めて事件に気づいた」と振り返る。
正男氏がチェックインするはずだったエアアジアのカウンター職員は「何も知らされていない。営業はいつもどおりだ」と言ったきり、口をつぐんだ。