誰しも他人に見られたくない物の一つや二つは持っているだろう。だが、神戸市須磨区の50代男性はかばんの奥に忍ばせていたとびきりの〝秘密〟を、予想もしない形で開示するはめになった。兵庫県警の警察官から違法薬物などを所持していると疑われ、強引に検査されたからだ。ところが、かばんの中から出てきたのは「大人のおもちゃ」。男性はプライバシーを侵害されたとして国家賠償請求訴訟を起こし、1月に検査の違法性を認める判決を勝ち取った。痛くもない腹を探られるのは善良な市民にとって迷惑である一方、市民を犯罪から守るためにはやむを得ない面もある。あくまで「任意」とされる所持品検査は、どこまで許されるのだろうか。
「見せたくないです!」抵抗むなしく
「大丈夫ですか」
巡回中のパトカーから降りた兵庫県警須磨署の巡査部長と巡査は、男性の車に近づき、そう声をかけた。
平成24年1月31日午後1時ごろ、神戸市須磨区のレンタルビデオ店の駐車場。車内で仮眠している男性を見つけ、車上狙いに遭わないよう指導するつもりだった。
ところが運転免許証を見せるように言われた男性は、駐車をとがめられたと誤解。慌てて車を出そうとしたのがあだになった。不審に思った巡査部長らは「車内を見せてほしい」と所持品検査への協力を要請。男性がトランクの中を見せると、今度は助手席に置いてあったかばんの中を見せるよう求めた。