演出を手がけるアレッサンドロ・タレヴィは「プッチーニは登場人物の心理状態や舞台上の動きを第一に考え、作曲の筆を進めています。楽譜に記されたト書きを一つずつ舞台上に表してみると、自然にドラマが動き出し、音楽があふれ出てきます。それはまるで映画の世界のようにも感じられます。プッチーニは映画のために偉大な音楽を書いた最初の大作曲家ではないかと思えるほどです。名アリアが次々に登場する魅力にあふれた作品ですが、自然な演技の中から胸を打つドラマが繰り広げられていきます」と作曲家が思い描いていた世界に迫る。
タレヴィは南アフリカで生まれ、英国で音楽や歴史などを学んだ。ベネチア、フィレンツェ、トリノなどイタリアの名門歌劇場で人間の内面に鋭く迫る繊細な演出を次々と発表し、色彩感に優れた舞台づくりでも注目を集める。「トスカ」は鮮やかな彩りの舞台で話題を呼んだ。今回も同じ舞台美術が使われる。
「『トスカ』は1900年のローマで、1800年のローマを想定して舞台が作られました。そこには2つの時代にあったローマの空気や精神が存在し、それは今の時代を生きる私たちの心も強く揺さぶります。もともとあったものは何かを求め、突き進むと、驚くほど色鮮やかな世界が目の前に現れました」とタレヴィは振り返る。今回が初来日だが、ローマでの公演以上に徹底した舞台づくりが日本でできたと胸を張る。