一筆多論

ミャンマーで取り組む「歯の妖精」と「配電盤」づくり 佐野慎輔

 「思ったより虫歯は少なかった。しかし、予防への意識を高めないと…」。長崎市の歯科医、角町正勝さんは、少しずつ豊かになり甘いモノも増えつつある村の暮らしに警鐘を鳴らす。「前に行った村では家族で1本の歯ブラシを使い回していた。ここは1人1本、歯ブラシがあったが、歯の状況が健康に直結するなどの知識はまるでない」

 角町さんは日本歯科医師会に協力を仰ぎ、有志たちで歯科医師養成の学校を造れないか、構想する。妖精プロジェクトの学校建設が地方の子供たちの就学状況改善に大きく役立っている。その歯科医版で、人材育成ができれば…。

 歯科医師たちはヤンゴンでミャンマー歯科医師会のテイン・キュー会長と懇談する機会を持った。東京医科歯科大学で学んだ会長は「ぜひ、日本からの力強い協力を…」と訴えた。

 唐突だが、話を聞いていて、司馬遼太郎さんの文が頭に浮かんだ。「明治のおもしろさは、首都の東京をもって欧米文明の配電盤にしたことである」。文章は「配電盤」である「本郷界隈(かいわい)」で受容された文明が農商務省など省庁という「配線」を通じて地方へ伝わるさまに及ぶ。

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